不登校の原因と対策

学校に行かないのはイジメ?本人のやる気がない?本当ですか?
ある日突然もしくは徐々に登校を渋り出し、不登校(登校拒否)になってしまう小学生・中学生が全国に346,482人(3.7%)の割合ということが分かっています。(令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について 文科省)
同調査によると、学校生活に対してやる気が出ない(32.2%)、不安・抑うつ(23.1%)、生活リズムの不調(23.0%)が主な原因ですが、これらは新型コロナウイルスによる不安や生活の乱れが含まれています。
これらを除くと、学業の不振や頻繁な宿題の未提出(15.2%)、友人関係をめぐる問題(13.3%)が多数を占めています。
意外にも「いじめ」を原因とした不登校(登校拒否)は2.0%と少なく、学力やコミュニケーション能力に起因したトラブルが不登校(登校拒否)の大きな要因だということがわかります。
では学力やコミュニケーションは本人のやる気や努力の問題なのでしょうか?
実は、やる気がない訳でも相手の気持ちを分かろうといない訳でもなく、発達障害(LD/ADHD/自閉症スペクトラム)・ギフテッド(2E)の可能性があります。
密接な関係がある発達障害・ギフテッドと不登校
不登校と発達障害には密接な関係が指摘されています。
不登校児の57%がASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠如・多動性障害)などの発達障害だという調査結果があり、発達障害を原因とした二次障害によって不登校(登校拒否)に陥っているケースが非常に多いことが分かっています。(「不登校と発達障害:不登校児の背景と転帰に関する検討」鈴木菜生他)
また、ギフテッドとは特定分野に特異な才能のある児童生徒のことで、概ねIQ130以上のお子さんが該当し、ギフテッドの中でも2E型ギフテッドは”得意な分野では突出した才能”を示すのですが、”苦手な分野では発達障害の特性”を持ちます。
この2E型ギフテッドの特性が影響し、不登校(登校拒否)に陥ってしまっているケースも多いと考えられます。
二次障害とは 発達障害等(一次障害)を原因として、周囲からの理解を得づらい環境で、繰り返し注意されたり、不安な経験をしたりすることで自己肯定感が下がり、うつ病、不安障害、不登校、ひきこもり、極端な勉強への拒否感等の症状が発生している状態 |
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)を原因とした不登校
学習障害(LD)の定義は以下の通りです。
- 全般的な知的発達に遅れがない(知的障害ではない)
- 学習に直結する6つの能力のうち一つ以上が困難
- 後天的な原因でなるものではない
まとめると、知的障害がないにも関わらず、学習に直結する6つの能力 (=6ツール)に先天的な弱点がある発達障害のことを学習障害(LD)または限局性学習症(SLD)といいます。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の原因となる6ツールの弱点は具体的には以下の通りです。
- 聞く力の弱点
- 話す力の弱点
- 読む力の弱点(識字障害=ディスレクシア)
- 書く力の弱点(書字障害=ディスグラフィア)
- 計算する力の弱点(算数障害=ディスカリキュリア)
- 推論する力の弱点
この6ツールのうち1つ以上に困難が生じている場合に「学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)もしくは学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の傾向がある=LDグレーゾーン」と見なされます。
聞く力の弱点や話す力の弱点は先生やお友達とのコミュニケーションのトラブルに直結し、不登校(登校拒否)に繋がっていきます。
また、識字障害(ディスレクシア)や書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)は学習面でのトラブルに繋がり、日々の宿題や学校の授業で徐々に自信を失い、不登校(登校拒否)に繋がっていきます。
ADHD・自閉症スペクトラムによる不登校
ADHD(注意欠如・多動性障害)もASD(自閉症スペクトラム)も基本的には脳の機能不全が引き起こす行動面やコミュニケーションの発達障害であり、不登校(登校拒否)になりやすいです。
なぜなら、ADHD(注意欠如・多動性障害)もASD(自閉症スペクトラム)の小学生・中学生は行動コントールや円滑なコミュニケーションを行う上での基礎的な能力に弱点があるため、以下のような先生やお友達とのコミュニケーションのトラブルに直結するからです。
- 集中することができない
- 落ち着きなく衝動的な行動が目立つ
- 片付けや提出物の管理ができない
- 相手の気持ちを考えない言動
- 思い込みや自分のルールを曲げない
ギフテッドによる不登校
ギフテッド(2E)には才能がある一方、その能力特有のトラブルが発生します。代表的なものが「過度激動(Overexcitabilities=OE)」です。
OEはギフテッドが刺激に対する並ならない反応を示すことをいいます。
過度激動の例
精神運動性 | 知覚性 | 想像性 | 知性 | 感情性 |
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身体的多動だけでなく、話すスピードが速い、話が一気に飛躍する、頭が働いて眠れない、という精神的多動を示します。 頭の回転が速いという印象を与える一方、落ち着きがないという印象も与えます。 | 増長した知覚意識を持ち、まぶしい光、大きい音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応します。 鋭い感性は、優れた美的感覚に繋がる一方で、神経質や感覚過敏にも繋がります。 | 強い想像力を持ち、枠にとらわれない独創的な考え方をし、白昼夢を楽しみ、前夜見た夢にも過剰に反応します。 隠喩などの詩的表現に優れますが、その一方で注意力散漫と見られます。 | 知識とロジック、新しい意味を渇望し、疑問を追求し、理論的な分析や真実を探求します。 そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、頭脳パズル、知覚・論理ゲームを好むなど、一般的なギフテッドの特徴です。 | 激しく劇的な感情を持ち、物事に深く感情移入し、愛着心、責任感、自省意識も非常に強いです。 感情の種類と幅が大きく、定型発達のお子さんより楽しみ、より悲しみ、より腹立ち、より驚き、より恐れ、より共感するという特徴を持ちます。 |
「精神運動性」「知覚性」「想像性」「知性」「感情性」の5つの分野があり、特に想像性、知性、感情性において反応が強い小学生・中学生は、定型発達のお子さんに比べて日常生活を深く体験し、楽しみも苦しみも激しく感じ、これが集団行動におけるトラブルに繋がっていきます。
また、OEによって脳に大きな負担がかかり、ギフテッド(2E)は一般の人より疲れやすく、それが不登校(登校拒否)の原因になることもあります。
アコモデーションとソーシャルスキルトレーニング
発達障害(LD/ADHD/自閉症スペクトラム)やギフテッドのお子さんが不登校から復学や進学するには、いきなり通学するのではなく学力やコミュニケーション能力のトレーニングを行う必要があります。
Re学院(りがくいん)では学力はアコモデーション(合理的配慮)、コミュニケーション能力はソーシャルスキルトレーニングで復学を支援します。
アコモデーションとは
発達障害(LD/ADHD/自閉症スペクトラム)・ギフテッドの発達支援・学習指導が進んでいるアメリカの教育にはアコモデーション(reasonable accommodation)という概念があります。
アコモデーションとは一般的には合理的配慮を意味しますが、Re学院では「普通教育に適応することを目的」として「教育内容やテスト内容そのものに質的な変更を加えず、発達の特性に個別最適化した指導方法を調整・工夫する支援方法」という本来の意味の合理的配慮として捉えています。
私たちはWISC-Ⅳなどの発達検査の結果を正しく理解し、特性が学習・行動・コミュニケーションにどのように影響するか解釈する独自のノウハウがあります。
例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)のお子さんが集中できない原因を特定して集中しやすい環境作りや適切な指示を行う、ASD(自閉症スペクトラム)の小学生・中学生の柔軟性の無さの原因を特定して気持ちや行動の切り替えがしやすい指示やルールを作るなど発達の特性に個別最適化した発達支援・学習指導(=不登校アコモデーション)を行います。
※中学受験・高校受験で学習環境を変えたい小学生・中学生は個別指導でフォローします。
アコモデーションとモディフィケーション アコモデーションとは異なる「モディフィケーション(modification)」という支援方法があります。 モディフィケーションは「普通教育への適応を想定しない」という特徴があり「普通教育から特別支援教育のレベルへ学習内容を変更する支援方法」です。 モディフィケーションは特性が顕著で、明らかに普通教育に適応するのが難しいお子さんには適切な支援方法ですが、グレーゾーンのお子さんにとっては進路選択の可能性を狭めるリスクとなります。 |
ソーシャルスキルトレーニングとは
ソーシャルスキルとは、相手の気持ちを理解する、流暢に会話をやりとりするなどの「コミュニケーションスキル」、集団のルールを理解する、集団参加するなどの「社会的行動」といった、人間関係や集団行動における社会的技能です。
簡単にいうと「一般常識に基づいた言動」であり、通常は家庭での日常生活や学校での集団生活で自ずと身につくものですが、発達障害(LD/ADHD/自閉症スペクトラム)・ギフテッドの特性によって言語や行動コントロールに弱点がある小学生・中学生は、ソーシャルスキルがうまく自然獲得できません。
その社会的技能を訓練する発達支援プログラムを「ソーシャルスキルトレーニング=SST」といいます。
Re学院では不登校(登校拒否)から復学するためにカリキュラムにソーシャルスキルトレーニングを盛り込んでいます。
起立性調節障害による不登校 「起立性調節障害」が不登校の原因となることがあります。 起立性調節障害は自律神経の働きが悪くなり、起立時に身体や脳への血流が低下する病気であり、これによって朝が起きれなくなります。 朝起きれないから怠けているのではなく、「病気の可能性がある」ということをご理解ください。 |
適応指導教室とホームスクール
不登校(登校拒否)への公的な支援については適応指導教室(教育支援センター)があり、全国約1,300箇所に設置されています。
適応指導教室(教育支援センター)のスタッフの多くは退職した元教員であり、定期的に医師や臨床心理士がカウンセリングを行いながら、授業を進めていきます。
しかしながら、学校というシステム・制度の焼き直し感があり、尚且つ特性へ根本的にアプローチするわけではないので、抵抗感が強いというお子さんも多いです。
Re学院(りがくいん)は学力はアコモデーション(合理的配慮)、コミュニケーション能力はソーシャルスキルトレーニングで復学を支援する「学習支援型フリースクール・通信制サポート校」で、適応指導教室(教育支援センター)とは違ったICTを活用した形でオルタナティブ教育を行います。
具体的には以下の特徴があります。
ICT教育×不登校支援=ホームスクール
- 個別最適化されたオンライン発達支援
Re学院では「学習支援型フリースクール・通信制サポート校」として各々の特性に個別最適化したオンライン授業を行います。
またオンライン授業は自宅で受けることができるので、引きこもってしまっている小学生・中学生でも安心して受講できるホームスクールとしての役割もあります。
- 応用行動分析学をコミュニケーションに導入
Re学院は応用行動分析学(Applied Behavior Analysis)に基づいた褒め方や効果的な指示の仕方など専門的なコミュニケーションでお子さんの行動や気持ちにアプローチするので、モチベーションや集中力を維持したまま授業を続けることができます。
またオンライン授業は動画配信型ではなく、双方向のやりとりができるライブ配信型ですので、相手のしぐさや目の動き、表情などを注視でい、対面指導とほぼ変わらない感覚で授業ができます。
- ICTによる効果的な授業
発達障害(LD/ADHD/自閉症スペクトラム)、ギフテッド(2E)、HSCの小学生・中学生にとって、ICT教育は従来のアナログ教育と比較して圧倒的に有効です。
印象に残りやすい視覚的な授業や書字の負担が少ない授業、ノートの管理、宿題や家庭学習のスケジュール管理などアナログ教育では出来なかったLD(学習障害)/SLD(限局性学習症)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、ギフテッド(2E)、HSCの特性を補助する効果的な授業が可能です。
無理矢理学校に行かせることは解決策ではない
学校に行かなくなったお子さんを本格的な不登校(登校拒否)になる前に、無理矢理学校に行かせる親心は理解できます。
しかしながら、一度立ち止まり「不登校(登校拒否)の原因が発達特性による可能性が高い」という事実に目を向けてみませんか?
特性があるお子さんが何のトレーニングも無しに、一般のお子さんを想定した学校制度に適応すること自体が無理のあることではないでしょうか。
特性に個別最適化した対策を行い、「学校に適応できる確率を上げてから復学させること」を私たちは推奨しております。